虚空に繁る木の歌   デッサン/前田ふむふむ
 
交う、海鳥の唾液で、
丹念に、白く消していった。
線は、さらに細くなり、風に靡いて。

老婆たちは、経文を唱えつづけている。
仏像にむかって。
眠りながら、唱えている。
門にむかって。

* ****

わたしは、門を眺めながら、棘のようなこめかみを、
過ぎゆく春に流し込む。

    2

そうだ。都会の話をしよう。
それは、楕円形のようにも見えたかもしれない。整然としたビルの窓が、いっせいに開かれていて、カーテンが静かな風に揺れている。暑い夏の眩暈のなかで、人の姿の全く見えない街が、情操的な佇まいを見せている白昼。街の最も中央の方から、甘い感傷の酒に酔った音楽
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