虚空に繁る木の歌 デッサン/前田ふむふむ
は、少年たちが、なにを話ているのか、言葉がわからずに、かれらが眠るのを待って、急ぎ逃走するが、いけども声は、遠くから聴こえて、わたしから、離れなかった。それは、なぜか、遠き幼い頃、聴いたことがある懐かしい声に似ていて、気がつくと、目の前を、幼いわたしが、広い浅瀬のなかで、ひとり泣いているのだ。
線が細さを取り戻すまで。
やさしい日々も思い出す。
船上でのことだ。
古いミシンだっただろうか、
わたしが、失われたみどりの山河の文字の入った布を織る。
恋人は潤んだひとみで、書いてある文字を、わたしに尋ねた。
わたしは、生涯教えないことが、愛であると思い、
織物の文字を、夜ごと飛び交う
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