虚空に繁る木の歌 デッサン/前田ふむふむ
怯えていた。
そのとき、いつものように手をみると、必ず、父がくれたしわだらけの指がひかっている。わたしは、熱くこみあげる眼差しで、その手のくすんだ欄干を握りしめるのだ。
線が繋がるまで。
気まぐれか。少し経って、線は太く変貌する。
一面、靄を転がしている浅瀬ができる。船は座礁して、汽笛を空に刺す。林立する陽炎が、立ち上がり、八月の色をした服を纏う少年たちが、永遠の端に、立ち止まっている、みずの流れを渇望して、わたしに櫂をあてがう。わたしは、櫂を捨てようとすると、少年たちは、足首を掴み、なにかを口走っている。彼らの後ろには、仏典の文字のような重層な垂直の壁が、見え隠れしている。わたしは、
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