こどんのかげ/ねなぎ
 

町の
魚を干した臭いの中で
駆けて行くのは
誰だろう

崖の下には
岩場が有ったが
その岩場にかかる
足場の意味を知る者は
地元の人々でも
限られた人々になってしまった

かつて
駅だった場所には
現在は何も残されておらず
枕木も敷石も消え
それどころか
地面さえ無くなってしまっていた

波が飛沫を白く泡立たせて
黒さに消えていく
うねりと音
そして
繰返す周期

黒っぽい屋根の
焼かれたような
木目の全てが
生臭く魚の腐敗した匂いに包まれ
その家々は半分以上が朽ちかけ
砂混じりの畑には
細々とした大根などが並ぶばかりで
干した
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