光を/こしごえ
ない
誰もいない林の陰へ
たたずむひとつの吐息
来ないかしら
風よ 来い
一声
ただひとり、すーきりりとおちてきた雪。
ましろな空からおちてきて、わたしの手のひ
らに結晶の小声が、しとっと響いた朝。二度
とは帰れない そこは遙か遠く 一度きりの
恋路 わたしの老齢をひそめて、右手に種子
をおしかくすしか道はないような明け方だ
おそれなければいけないことは忘れてしまっ
た、おそれを思い出せないこと ご安心を
ひとは愛を)くりかえす
わたしの果てしない原野で
ツルが一声
飛び立った
子守歌
黙礼を交した
ぎりぎりの世界で生
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