苺愛歌/Rin K
て
いまでも聞こえる、ふたりだけの秘密
タカラモノはもう目の前にあるから
君だけに教えてあげよう
ぼくとじいちゃんと、苺の話
ある日ぼくは、熱を出した
巻貝の渦のような眩暈がして
海鳴りが、頭を揺さぶるように響いた
じいちゃんの大きなてのひらの中で
ぼくは苺、とつぶやいたらしい
まだ春と呼べる季節ではなかったけれど
さすがは海賊のじいちゃんで
半日もしないうちに苺を、手に入れてしまった
じいちゃんの指先から受け取った苺は
かすかにしょっぱかった それは、
歩き回ったせいの
汗の味だったのかもしれない
祈りのせいの
涙の味だったのかもしれな
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