旅人/相良ゆう
 
るんだ
 僕が探しているのは この雛の待つ巣のようなところなんだ」

大樹を見上げる彼を見上げてみるけれど
僕はますますわからなくなって さらに彼に聞いた

「おじさん 僕には ぜんぜんわからないよ 
 おじさんは いったい 何を探しているの?」


彼はまた僕の隣に座り
さっきと同じ優しい声で教えてくれた

「誰もがほしいと願っていて
 誰もが大切にしているつもりなのに
 誰もがいつの間にか見失ってしまっている
 命と同じくらい尊いものさ」

「それが 居場所なの?」

「そうさ」









「おじさんは 居場所を 見つけられ
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