旅人/相良ゆう
 
られそうかい?」

少しくの沈黙の後 僕は恐る恐る彼に尋ねた


「少し時間は掛かったけど
 この道の向こうに あるような気がするんだ」

彼はゆっくりと立ち上がり 笑顔で

「ありがとう」

と僕の頭を撫でて 再び旅立っていった

結局僕は 彼が何を探しているのか わからなかった







そして今

僕は苔むしたあの杉の木がある並木道に立っている
山奥に消えたあの日の彼に自分を重ねて


あの時 彼が探していた「居場所」
時を重ね 歳を重ねるにつれて
それはいつの間にか 僕の探し物になっていた

彼は居場所を見つけたのだろうか
僕は見つけられるのだろうか

そう思うと 僕はとても彼に会いたくなる

僕は彼の辿ったであろう道を行く
でも彼とは反対の方向を向いて

こうして僕は 旅人になった
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