旅人/相良ゆう
て なんのこと?」
僕が問うと 彼は手招きをして僕を呼んだ
僕が彼の傍に座り込むと
彼は苔むした大きな木の根を やさしく擦りながら応えた
「見てごらん しっかりと大地を抱くこの太い根を
僕が探しているのは この根が抱く大地のようなところなんだ」
彼の声はとても優しかったけれど
僕はやっぱりわからなくて もう一度彼に聞いた
「大地のようなところって どんなところ?」
彼は今度は 立ち上がって木の幹を擦り
その幹の伸びる先に目を向けて応えた
「上をごらん 枝の間に作られたあのオナガの巣を
あそこで雛が何の疑いも無く親鳥の帰りを待っているん
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