暗世夢/結城 森士
 
「今は夜だから」
聞いてもいない(のに)
白い眼帯がそう言った。

鉄橋には
銀色の光が
差し込んでいる。
僕が
「太陽の光は」
「取れたかい」
と尋ねると
眼帯の口は微笑み
右の手のひらで掴んだ
2つの眩しい玉を見せた。
そして左の手で
僕の目の辺りを指差した。
僕の両目は消えかけている。
僕の両目から涙がこぼれた。
眼帯の口は微笑んだ。

彼は眼帯を取り、
僕に眼帯を巻いてくれた、
彼は
僕だったように思える。そして
僕は
一人で歩いていった。

赤い風船が
揺れながら空に
昇っていった。












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