暗世夢/結城 森士
 
?…

駅前の赤い
陽射しが街の風景を
揺らし燃えている。

一人で電車を降りると、
少し離れた鉄橋に後姿が
見える。

その人は太陽の
逆光を浴びて
黒い影を
浮かび上がらせていた。

黒い影は、
帯状に広がりを見せる
陽の光の屈折に触るのだ
と言い、
両手は頼りなく虚空を泳ぐ。
よく見ると彼の両目には
白い眼帯が巻かれていて、
陽射しの赤に染まっていた。

鉄橋に佇む沈黙、急に
不安を感じる。
人は他に
誰もいない。
辺りはずっと
光に溢れていた筈
なのに、いつの間にか
見える景色が
影の様に
青暗くなっている「だって」
「今
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