浮遊する夢の形状    デッサン/前田ふむふむ
 
振り返って、
   ここが廃墟であると微笑んだ、
あの少女は、誰だったのだろう。
なにゆえか、懐かしい。

窓が正確な長方形を組み立てて、
視界になぞるように、線を引く。
線は浮遊して、静物に言葉をあたえる。
次々と引きだされる個物のいのちは、
波打つひかりのなかを、文字を刻んで泳いでいく。
やがて、線が途絶えるところ、
わたしは、線を拒絶した荒廃した群が、列をなして、
窓枠をこえていくのを見つめる。
見つめつづけて。

       3

思い出せないことがある。
わたしの儚い恋の指紋だったかもしれない。

単調な原色の青空を貼り付けた風景が、声をあげて、
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