浮遊する夢の形状 デッサン/前田ふむふむ
振り返って、
ここが廃墟であると微笑んだ、
あの少女は、誰だったのだろう。
なにゆえか、懐かしい。
窓が正確な長方形を組み立てて、
視界になぞるように、線を引く。
線は浮遊して、静物に言葉をあたえる。
次々と引きだされる個物のいのちは、
波打つひかりのなかを、文字を刻んで泳いでいく。
やがて、線が途絶えるところ、
わたしは、線を拒絶した荒廃した群が、列をなして、
窓枠をこえていくのを見つめる。
見つめつづけて。
3
思い出せないことがある。
わたしの儚い恋の指紋だったかもしれない。
単調な原色の青空を貼り付けた風景が、声をあげて、
[次のページ]
戻る 編 削 Point(28)