【小説】水色の下/R
 
好きだから」
「あんたの腐乱死体と会うの、私は嫌よ」

母が言った。

ああ、水の中だと腐ってしまうんだ

「母さん、ちょっと出かけてくるー」
「車に気をつけていくのよ」

水の中にずっと居たら、私達の身体は腐ってしまう。
生きることが出来ても、私は水にふやけてぶよぶよの醜いものになってしまう。

水の中に漂っていても、水はもう私を受け入れない。

空気の分子の中に居ると、一人の境界線が明確になってしまって嫌だった。
それでも空気の中にしか存在できず、そして腐っていく。

どこにいても、いつかは腐ってしまうから。
受け入れてくれるところなんて、ない。


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