【小説】水色の下/R
今日も道に陽炎が立っていて、
あまりに空気の中の水が重くて、
本当の水の中に溶けてしまいたいと思い、自然にプールに足が向かっていた。
水は透明で、あまりにも脆弱で、私を映して儚げにきらめいていた。
その中に沈んで死んでしまえたら。
“受け入れてくれないなら、いっそ殺してください”
身体の力を抜いて空気を抜いて、私は水に沈んでいった。
目を閉じて水が私の中に入って意識がなくなるのを待った。
それはまるで誰かとつながるかのように。私の中に漬かって。
急に苦しくなり、目を開けた。水の上から光が見えた。
太陽。ライト。人口の光。水面の上から、ゆらゆら、きらきらと光っていた。
耐え切れず浮かんで、空気も水も吐き出して、泣いた。
そのゆらゆら揺れる光があまりにも綺麗だったから、
殺されそこなった私は仕方なく生きることにした。
いつか私の中で、誰かと心を満たすことが出来たら。
水の中に満ちる光のように、いつか腐ってゆくまで独りではないように。
戻る 編 削 Point(2)