【小説】水色の下/R
捨てられるような気がして私はまた泣いてしまい、
自己嫌悪でまた泣いていた。
完全に、「女」以外の何者でもない私が。
「帰りたきゃ帰れよ」
「・・・うん。」
私は彼にキスをして、服を着て、部屋を出た。
彼が壁を殴る音が聞こえた。
あの壁はきっと彼のこころなのだろう。白くて、どうしようもない痛みの穴と、
歳月により風化し、汚れていく彼のこころなのだろう。
キスだけがやさしかった。
なんとなく、最後なんだろうなという予感がした。
今でも私は失っていくものが大きいのか小さいのかわからない。
失って、気持ちは殖えていくのだろうか。
細胞分裂みたいに。
外は暑かった。
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