舞蝶〜踊り子と一人の紳士〜/なかがわひろか
 
ね。しかしどうだい、雨もだんだん強くなってくる。」
女 :「音楽がないのよ。だからアタクシ降らせましたの。」
紳士:「雨をかい?」
女 :「そうよ。雨を。」
紳士:「音楽がないから?」
女 :「音楽がないから。」
紳士:「さあさあそんなこと言っていないで。風邪を引くよ。」
女 :「風邪なんか引かなくってよ。アタクシ、踊っているだけですもの。」
紳士:「どうして、君は踊るんだい。」
女 :「浮世の憂いを浄化するためよ。」
紳士:「おや、難しいね。」
女 :「うふふ。」
紳士:「さあさあ、いろいろ言っていないで、こっちへおいで。」
女 :「どこへ連れ
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