詩と詩論(その一)/生田 稔
大空の返(こだ)響(ま)の音と
地の底のうめきの聲と
交わりて調(しらべ)は深し
旅人に
母はやどりぬ
若人(わかひと)に父は降れり
小野の煙(けぶり)の中に
かすかなる節は残れり
旅人は
歌い続けぬ
嬰子の昔にかへり
微笑みて歌いつつあり
これらの各々の連は初めから全て5・7 5・7の韻を踏むi。その一見すると単調にも思えるリズムが独特な印象をこの詩に与える。筆者は和歌に優れていたのかも知れない。その職業は医師である。詩は少しも難解ではない、しかしいくども読み込むと自ずから良さが生ずる。詩とはそういうものではなかろうか。詩人の常として、各詩人は偏見によって詩
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