詩と詩論(その一)/生田 稔
うちに次第に虜になる魅力なのだ。調べてみると非常に単調なるリズムである。
「漂白」という先頭の詩をみてみよう。
蓆(むしろ)戸(と)に
秋風吹いて
河添の旅籠屋寂し
哀れなる旅の男は
夕暮れの空を眺めて
いと低く歌いはじめぬ
亡母(なきはは)は
處(おと)女(め)となりて
白き額(ぬか)つきに現はれ
亡父(なきちち)は
童子(わらは)となりて
圓(まろ)き肩銀河を渡る斷
柳洩る
夜の河白く
河越えて煙(けぶり)の小野に
かすかなる笛の音ありて
旅人の胸に觸れたり
故郷(ふるさと)の
谷間の歌は
續つつ斷えつつ哀(かな)し
大空
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