詩と詩論(その一)/生田 稔
 
  人来たれば
  迎えて会う
  人去れば
  吾座にもどる
  
  眠り足りて
  夢なく
  起きて
  倦むことなし

  晝には
  晝にかくことあり
  夜には
  夜に語ることあり

  世にあずけたる
  わが壽(いのち)は
  時来たらば
  世に返さむ
  
  草の生命は
  わが命より短く
  樹の年輪は
  わが年輪より多し

  わが生命の一瞬
  心眼明らかに
  天人の五衰は問わず
 
 柴門(さいもん)=柴で作った門、老境にふさわしい質素な家の門である。五衰=仏教で言う天人に死がちかずくと表れる五つの衰相
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