詩と詩論(その一)/生田 稔
も同じようなことを嘆く。しかしアブラハムは遥かに遠い神の都を望みみたという。人はそれぞれに感慨を持っている。ゲーテは現世の恋に心を託して16歳の少女に恋したという、その時70歳だったとか。でもこれを笑うなかれ。恋を尊重しない人は一人もいまい。若くとも老いても人の心はロマンで満ちている。
いや恋愛のことに論をすすめまじ。私もまた70歳、詩について一書を成さんんとしている。最後に「老境」という詩を紹介しよう。
吾老いぬれど
仙家に入らず
茶烟軽く
紅塵の裡に住む
柴門(さいもん)を守るは
吾家の月
竹窓に吹くは
隣家の風
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