詩と詩論(その一)/生田 稔
 
感じがする。漢詩調である。今の若い詩人が、漢詩もどきの詩を書いてもこれだけの風格は出せまい。明治期後半の「文庫」派の詩人の一人である。文学史についての記述は極力避けたい、文学史によって詩人を理解することは少し邪道のように思える。詩は人そのものから流れ出るのであって、当時の流行や風潮から考え味わうものではなかろう。彼の詩を引用してみよう、
 病あらば
 詩に生くべし
 家なくば
 詩に住むべし

 恋を失はば
 詩に求むべし
 禍ひ来たらば
 詩に慰むべし

 心さびしき時は
 詩を祭るべし
 朝に夕に
 詩をうたうべし 
 「詩の道」と題するこの詩、詩をかく理由を端的
[次のページ]
戻る   Point(16)