詩と詩論(その一)/生田 稔
感じがする。漢詩調である。今の若い詩人が、漢詩もどきの詩を書いてもこれだけの風格は出せまい。明治期後半の「文庫」派の詩人の一人である。文学史についての記述は極力避けたい、文学史によって詩人を理解することは少し邪道のように思える。詩は人そのものから流れ出るのであって、当時の流行や風潮から考え味わうものではなかろう。彼の詩を引用してみよう、
病あらば
詩に生くべし
家なくば
詩に住むべし
恋を失はば
詩に求むべし
禍ひ来たらば
詩に慰むべし
心さびしき時は
詩を祭るべし
朝に夕に
詩をうたうべし
「詩の道」と題するこの詩、詩をかく理由を端的
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