詩と詩論(その一)/生田 稔
 
 詩と詩論
〔序〕
 27のとき詩人になりたいと思い立った。その頃小説も短歌も翻訳もやっていたが、最もなりたかったのが詩を書く人であつた。詩を熱心に読むことが好きだつたせいでもあろう。
 大学へ入りたいと3年の浪人のやむなきであったが、その三年目にエドモンド・ブランデンさんの吹き込んだ“雲雀(ひばり)によせて”と”つれなき手弱女(たおやめ)”の二つの詩朗読レコードをいくども幾度も聴いた。一日に一度ではなかったから365日として1000回は聴いたのではなかろうか,隅々まで暗誦していた。
 この二つの英詩が、私の詩を愛するきっかけとなった。マケドニアのアレクサンダー大王は、“イーリアス”の一万
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