マテリアル・グランドツアー/カンチェルスキス
さみしそうにつぶやいた
百八十センチぐらいある
若い女が自転車を押しながら歩いてきた
紺色のぴちっとしたTシャツだった
胸に大きく白抜き文字でMというマークがあった
きっとSなんだろうなと思っておれは通り過ぎた
散髪屋は閉まっていた
主人はふらっと遠洋漁業に行ったきり戻ってきてない
市議会議員の女の家のガレージには
外車がびっしり並んでる
買い物にはホットパンツだ
買い物袋から
突き出たフランスパン
女はまだ欲求不満だ
何か欲しがってる
玄関には市民相談所という
看板がある
何でも冷えピタシートで
済まそうとす
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