最期の写真家/蒸発王
るらしい
つまり
人生がまもなく終わってしまう人の写真は
僕が撮ると
その人が『生きるべき人生』の中で
一番輝かしい年齢になって現れる
だから僕の撮る写真の中で
実年齢とは違った写真が現像された人は
もう長くないということだった
その事実を聞いてから
僕は写真を撮るのが怖くなった
サポートはするけど
シャッターを切るのは全部師匠に任せた
師匠は僕が成長できないだろうと
叱り飛ばしたが
もしもまた若若しい写真ができたらと思うと
僕はカメラの後ろに立てなかった
十一月
スタジオは七五三の客で満員で
師匠はいつもに増し
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