最期の写真家/蒸発王
増して機嫌が悪く
人手が足りないからお前も撮れ と唸った
若い家族連ればかりだから
少しだけ安心して
僕はシャッターを切った
出来上がった写真の中に
1枚だけ
若い女の人が映ったものが出てきた
真っ赤な地色に桜の小紋が散らされて
成人式の写真のようで
元々は
少女の写真だった
僕はスタジオに来れなくなった
師匠も何も言わなかった
あの少女が
何時死ぬのか
そればかりを考え
もしかしたら自分が撮ったから
あの子は死んでしまうのではないかと思った
それでも
写真が好きで
どうしたら良いか判らなかった
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