投函/tonpekep
わたしはさようならを握りしめながら
少し景気の良くなったような気もする
手入れの行き届いた
けれどもいたずらなのかうらみ節なのか
詮索はあまりしたくはないけれど
10円傷で丁寧に彫られた
葵の御紋の印籠の
描かれたタクシーを止め
「さようならを投函できるポストまで」と
そう告げたなら
「ひかえおろう」
慌ててその場にひかえたのですが
タクシーの運転手さんは
ごそごそとポケットから10円玉を取り出し
投げつけたかと思うと
チキチキマシーンのように
今年の恵方に去ってゆくのでした
乗車拒否をされたのか
されなかったのか
そこのところが微妙にあやふやでは
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