遠い鐘音/服部 剛
ある日
突然自らの生を閉じた人がいる
そして何事も無いかのように年を越し
全国の寺では蟻粒(ありつぶ)の者たちが初詣の行列となり
無数の小銭を響かせる
( 誰かの遺言が綴られた
( 一枚の手紙
( 無風の闇にゆらめいて
群衆に雑じった孤独者が、いつまでも続く日々に流さ
れながら、時折ビルの間の顔の無い空を見上げて、自
問自答を呟いている。( 縮んでゆく・・・狭まって
ゆく・・・この世界の、時間と空間は・・・)
( ビルの屋上に、自らの生を閉じた人の影 )
*
今日は久しぶりの休みであった。祖
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