*ドナとジョーの薔薇の園*/知風
 
むかしむかしの
おおむかし


このあたりはジョーリングという
若い貴族のおおきな私園であった

ジョーリングにはヨニドナという
美しい妻があった

ふたりは清き心と身を持つ
神さまに祝福された夫婦だった

ふたりは互いのことを
ドナとジョーと呼び合った


ドナとジョーの互いへの愛は深く
仲睦まじいことこの上ない

ドナははるか東の地から来た
美しい花を愛した

その花の名を薔薇といい
細くたおやかな蔓の先に花をつけた

ふたりの庭に春光は絶えることなく
見渡すかぎりに薔薇が咲き誇った

ドナの薔薇は決して散らず
どの花も花びら一枚落と
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