二つの灯台 デッサン/前田ふむふむ
化粧のひかりに、
溶けこむように、佇み、汽船を見送る。
機械仕掛けの灯台守は、決められた能事を、
空気を吸うようにこなして、
海のあらいゆれに、守り手の覚悟を、
滲みこませる。
あしもとは、岩が鋭く、
時代の芯を、声をあげて固める。
牧歌的な海鳥は、家族が集う岩場を、
わたしが、ひくい眼差しで汚すと、
湧き出すように、海を蹴る。
空が、白くはばたいて、舞踏の絵筆に、骨をゆだねる。
すばやく海鳥の描く曲線に、
塗られて、たてる垂直を奪われながら、
混濁のなかに沈む、灯台は、
わたしの掌のなかで、煌々と燃えだしてゆく。
試されることが、灯台守をいらつかせるのだ。
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