二つの灯台 デッサン/前田ふむふむ
だ。
機械は、狂って、白昼を照らす。
あたらしい情景は、
こうして、起き上がることはない。
機械のほころびを整備してから、
海の寝台に、眠りながら、はためく古い旗に、
身を寄せて、
灯台は、塗り替えつづけた壁の、
濃いあらましを、
ふたたび、通る貨物船の汽笛に、
遮られるまで、つづけていく。
夜を照らす閃光の準備は、すでに済んでいるのだ。
暗い夜の比喩が、
たびたび、零れるように流れては、
熱をおびてざわめく、半島の岬に、
つぎつぎと突き刺さるが、
いくら待っても、夜の訪れることはない。
灯台は、いつまでも、臆病な空に浮び、
繰り返し、沈んでいく。
永遠に太陽が沈まない空で、
新しい視界をまっている。
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