二つの灯台  デッサン/前田ふむふむ
 
だ。
機械は、狂って、白昼を照らす。
あたらしい情景は、
こうして、起き上がることはない。

機械のほころびを整備してから、
海の寝台に、眠りながら、はためく古い旗に、
身を寄せて、
灯台は、塗り替えつづけた壁の、
濃いあらましを、
ふたたび、通る貨物船の汽笛に、
遮られるまで、つづけていく。

夜を照らす閃光の準備は、すでに済んでいるのだ。

暗い夜の比喩が、
たびたび、零れるように流れては、
熱をおびてざわめく、半島の岬に、
つぎつぎと突き刺さるが、

いくら待っても、夜の訪れることはない。

灯台は、いつまでも、臆病な空に浮び、
繰り返し、沈んでいく。
       永遠に太陽が沈まない空で、
         新しい視界をまっている。
        





戻る   Point(20)