二つの灯台  デッサン/前田ふむふむ
 
どのくらい
眠っているのだろう。

眠りのなかで、深い眠りのなかで、
わたしのこころは、
儚い夢を、都会の水底にひろげる。
灯台は、広野を走る詩集の断片を紐解き、
ときの葬送を歌う。

遥か、いにしえに、
ジョン万次郎がアメリカの地を踏んだ時、
彼は全く眠らなかっただろう。
新大陸の未知の風景の、あらかたを見るまでは。
        
  2  孤独な灯台

汽船が、水平線の喉から、
いつまでも、西方の螺旋階段を下降する。
天空の燃える炭団を扇いで。
孤独な灯台は、白いなみ飛沫を、
ふところに抱いた、
寡黙な白い胸を広げて、薄化粧
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