二つの灯台 デッサン/前田ふむふむ
茫とした荒土に眼を遣ると、
遥かエニセイ川の河口に沈んでいる、
澄んだ黒色の世界のあしもとで、
幻魚になって、自由に、遊戯している、
あるいは、灼熱のリビア砂漠を彷徨しながらも
偶然、いのちのオアシスを見つめる、
老練な駱駝は、弓のような砂漠の舟になり、
渇望した喉をうるおす、
そんな、夢の微かな記憶の雫が、
白骨となった地上の灯台を、
魂の閉塞から連れ出してくれるだろうか。
透き間なく、生ける死者の洪水に犯された、
機械の音を引き摺っている、日常の連鎖。
抒情詩の彼方は、
灰色の風景。
わたしは、どの
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