夜にかけた梯子/しめじ
に駆け乗る
目的地が必要なのではなく
ただ身体を運搬してほしかったのだ
外套の襟を立てたところで
胸の陰圧が水を欲してやまない
車窓から見える海を全て飲み込もうと
身体が激しく脈打ち
ぐるんと裏返しになる
むき出しになる心臓
干からびたパプリカに似た心は
座席に放り出されたまま無意味に移動を続ける
時計は既に止まっていた
老朽化した梵鐘が砕け散った
最期の音が鳴らされたのだ
川が海へと流れるように
鐘の音は全ての夜へ
人間の夜へと消えていった
虚ろな心臓は耐え切れずに
肉の皮を再び被った
アルクホールが喉を焼く
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