■批評祭参加作品■日本の詩における韻律の歴史/岡部淳太郎
最も愚直なものが、つねに私を支えている。たとえば、とある瑣事の法外な私への侵害をようやく阻止し得たあとで、その帰結を省みると、私は自らが全く巨大な舌として瑣事の進行を舐めずっていたことに気づくことがある。つまり私を支える感触が、時折猛烈な勢いで私を最も貪欲な本来の形状につきもどすのだ。その為私の運動の推移に沿って、道々涎の如きものが、あきらかにその痕跡を印している。例えば私の妻の腹部にその痕跡をみることがある。妻が極力それを避けようとしたであろうと想像するに難くない非常な困乱した形状で、さながら迷路のように入り組んだままで、それは彼女の下腹部に至っている。
(粒来哲蔵「舌のある風景」より)}
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