■批評祭参加作品■日本の詩における韻律の歴史/岡部淳太郎
 
の方にもあるが、それはさほど目立たない)。「無理なむすめ むだな愛」は「む」の音で始まる言葉を三つ並べ、「こすい心と凍えた恋」は「こ」の音の言葉を四つ並べている。「四角なしきたり」「海のウニ」も同様だが、さらにここではそれぞれの行末で脚韻を踏み、おまけに「無理」と「愛」、「こすい」と「恋」、「しきたり」「海」「ウニ」と、同じ行の中でも韻を踏んでいる。いっけん簡単な言葉の羅列のように見えるが、韻が複雑に絡み合っているのだ。引用部分の前半でも、最終三行ほど目立たないが韻への意識というのは徹底されている。さらに言えば、短い言葉をつなぎ合わせていくことによって生じる独特のリズム感もあって、それはこの詩全体
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