かまいたちを一匹。/吉田ぐんじょう
毎晩そう念じて
布団の底にもぐりこむ
布団は随分小さいので
完全にもぐりこむ前に
向こう側から足が出てしまう
つまさきは夜に飲み込まれてゆく
急に心細くなる
どんどん足がなくなって
しまいには
幽霊になってしまうんじゃないか
それでも一応もぐることはやめない
・
一週間を過ぎると
動物は滅多に歩き回らなくなった
わたしの真上に居を定めたのかもしれない
仰向けに寝転がって
へそなどを掻くのはもうやめにした
例え何であろうと
見られているのはいい気がしない
どうしてもへそを掻きたいときには
うつ伏せで掻くようにしている
指先は思いの外つめた
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