かまいたちを一匹。/吉田ぐんじょう
 
めたくて
どんなにそっとおなかに触れても
毎回びっくりしてしまう



二週間後
朝起きたら手が切れていた
これで漸く合点がいった
天井裏にいるのはかまいたちであろう
随分ちいさい傷だったので
まだ赤ちゃんのかまいたちかも知れない
眠りに落ちる直前に
木目に向かって
かまいたち
かまいたち
と優しく呼ぶと
ばたばたばたっと駆けてゆく音がした



以来わたしは
何を飼っているのか聞かれたら
かまいたちを一匹飼っている
と言う事にしている
この頃は大分慣れてきて
ひゅうひゅうと風が吹く晩には
喜んでいるのかきしきしと
鳴き声らしきものを立てるようになった

いつかかまいたちがなついたら
肩にでも乗せて
その辺を散歩するのがわたしの夢だ

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