見つめ合い/鴫澤初音
暇つぶしに入った喫茶店で煙草を吸いながら、注文したものを
忘れていく。誰もそばにいなかった。そもそも友人なんていた
記憶もなかった。誰か可愛い女の子と恋に落ちたかった。友に
なるために恋にはどうして落ちないんだろう。不条理なくらい惹
かれるような、自分ではどうしようもない程咽喉が渇いていく
友、つまらない、なんていつも思っていて、それが虚しかった。
「初音ちゃん、」
「初音ちゃん、」
笑って皆が言う。答える声が少しも届かなかった光のない目線。
いつの間にかおかれたバナナジュース。煙草を左手に持ちかえて
一口飲んでみた。ガ
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