シン/風季
プリントを落とし
小さい彫刻刀を握る
傾いているのは体ではなくて心ではなくて時計の針
何もが引力を持ち始める
つま先の下でどよめいている川音
水が果てへと呼んでいるのかしら
流れる空に視界を邪魔されて
たしかに私は 太陽に、どいてほしいと思ったけれど
”此処では呼吸が固まってしまうのかもしれない”
とうに固まっている腕、人間の動きをしてくださいな
がたがたとぶれる瞳を片手で少し押さえ
まだ帰るわけに行かないからどうか、どうにかと点滅している
今、ランプが消えていった
懐かしいこの心音は十年も前の鼓動ですね
街を流れながら
気付かれないよ
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