『春と修羅』における喪失のドラマについて/岡部淳太郎
宮沢賢治の『春と修羅』について、多少語りたい。もっとも、宮沢賢治についても『春と修羅』についても語り尽くされた感があるので、いまさら僕ごときが何か新たなことを語れるかは非常に心許ないのだが。
『春と修羅』はいくつかのパートに分かれており、その中でも今回与えられたテーマは「無声慟哭」「オホーツク挽歌」の五篇ずつ、計十篇である。『春と修羅』の中でも妹としの病死を扱った「無声慟哭」は非常に有名であり、それゆえいまさら新しいことを語れるのかという不安があるが、とりあえずやってみよう。
その前に一つ確認しておきたいのは、この一冊は詩集ではなくあくまでも「心象スケッチ」であるということだ。つまり、詩
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