空を買いに/由比良 倖
その店には誰もいなかった。天井は無く、空だけが拡がっていて、それは染みひとつ無い、上質な青空だった。空には値札が貼られていたけれど、少しばかり高価だったので、1m四方くらいなら買えなくもないけれど、僕の部屋の天井全体に設置するには、手持ちのお金では足りない。
僕は売り物の風や、畦道を見て歩いた。ヴィンテージの古い池があって、お誂え向きに、怪しく光る満月と、夜空を棚引く雲の端まで売っていた。さすがに古い物だけあって、相当な値段が付いている。池に飛び込むカエルはオプションだった。
金閣寺を売っているコーナーまで来たとき、ややリーズナブルなミディアムサイズの池の側には、中古でジャンク品の墓が売
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