ライタァジェノサイド/月夜乃海花
人には書く理由がある。
ただ、自分の感性を見せつけるため。
ただ、ありのままの文字を色付けるため。
ただ、そこに紙があるため。
「何故、僕が物語を書くのか?」
「簡単な話だ。文章を書くということ程、便利なものは無い。たった一行で誰かの人生を表すことが出来る。例えば『彼は戦時中に生まれ、戦後数年で死んだ。』これだけで、彼という人物は生まれて、殺されたのだよ。私の手でね。」
「どんな馬鹿でも紙面の上では神になれる。それが文章だ。どんな凡人でも天才を作ることが出来る。文字という色を混ぜて、奏でてね。色彩にも音符にも限界がある。だが、文字は無限だ。どんなに混ぜたところで、真っ黒に濁った
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