初冬の朝/山人
まだ里に雪は降りていないが、初冬である。晩秋にかけて、割と寒くはなく、むしろ暖かいと感じた。
あたりはすっかり寂れた風景となっていて、収穫の予定のない近所の畑の渋柿だけが鮮やかな色を呈している。他の色と言えば、茶色い色とやたら眩しい太陽光線だけだ。
雪を前に、土建屋のトラックが忙しそうに行きかい、私はそれをうらやましそうに終日幾日も眺めていた。働きたいのに、働くことを制限されるのは苦痛でもある。
この秋は多忙に明け暮れた。従来通り、登山道除草を土日に挟み、平日は勤務に勤しんだ。そんな折、十月の初旬に母が他界。年齢から言っても妥当であったが、あと五年は少なくとも生存するであろうと思って
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