一家/墨晶
 
          掌編

 ハーマンさんのお店に野菜をに買いに行ったら、遠くからわたしを呼ぶ声を聞いた。うるさい音を立てる自転車を漕いで埃っぽい道を、兄の友人(だった)、オーガストが近づいてきた。どうして肥った男の人って云うのは、脇汗や胸汗や腹汗をかく癖にグレーのTシャツを着るのかしら。胸のカンジのプリント、わたしはジャパニーズレストランに行ったことがあるから読めた。「天丼」って書いてあったけど、わかって着ているんだとしたら、前から思ってたけど、オーガストって馬鹿っぽいわ。

「グレゴリーはまだ部屋から出てこないの?」
「ええ、そうね」
「・・面白いSF小説を読んだんだ」
「だから
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