一家/墨晶
から何?」
「グレゴリーも気に入ると思うから、話したいと思って」
「気に入るとしても、兄さんは誰とも話したがっていないと思う」
「・・そう、でも、云っておいて。もう随分話してない」
「それは、あたしたち家族もだわ」
「・・じゃあ、また」
「兄」、わたし、母、父。その順番で町を去る計画だ。そして、わたしたちの住んだ家も壊され更地になるのだ。「兄」が部屋から出てこなくなったこと、そんな家族がいたことなんて、これで、ただの「話」になるのよ。
キャベツ、セロリ、レタス、ベルペッパー、キューカンバー、アヴォカド。それまで、肉とジャガ芋しか食べなかったわたしたちは「兄」の食餌と称してこれらの野菜を大量に食べ続けた。
でも不思議だ。「わたしの兄・グレゴリー」に、こんなにも会いたがっている人たちが、どこの地にも必ずいる、と云うことが。
了
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