映画『赤ひげ』と父の思い出/道草次郎
昨年、父が庭に植えたハナモモの樹(桜の時期に前後して紅白のにぎやかな花を咲かせる)がはからずも倒木の憂き目に遭った。特別、大風が吹いたわけでもないが、黒々としたその幹は人知れず根元からボキリと折れてしまったのだ。それだけではない、父の大切にしていた蔵書も経年劣化により黴臭くなり、ところどころ虫食いの痕がみられる。父が鬼籍に入りはや二十年となるが、事象は留まることを知らずどんどんと流れていく。あたかもそれだけは確かな事のように。
言葉では言えない、何か、途轍もなくでかいものでも見せつけられた経験について今回は話そうと思う。何もそれは必ずしも実生活によっていなくてもいい筈だ。例えば、一本の映画が
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