カスタマーサービス/中田満帆
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《気づくと、おれは腹を押さえながら傘を差して、元町は、裏通りのガード下まで歩いてた。雨が激しかった。血はそれほどでてない。いまならまだ助かるというのにそこらで酒を呑み、最期に残ってる薬を3つもキメる。たまらない陶酔感と、刺激臭、そしてじぶんの血の色彩が自在性を持ちはじめ、酩酊した頭に衝撃が走る。これまでも欲しがってた、ある種の感動、そして詩的な死。虹鱒のなかで泳ぐ夢を見る、つかのまの出来事たち。おれは一瞬、歩道にうずくまった。だれかが声をかける。だれかがおれのなまえを呼ぶ。でも、そいつの顔が認識できない。こんな感じなのか、失貌症ってのは。それとも、おれのなかで他人を拒絶するな
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