稜線/山人
網戸の向こうには、山岳の稜線と薄明るい空がはざかいを浮きだたせている。草むらではコオロギなどの虫の音が、凌ぎやすい朝のうちにと盛んに音を紡いでいる。朝の涼風が頬にあたり、ひさびさのインスタントコーヒーも美味く感じられる。そういえばここのところ、夜は月も出て昨日は家の前に小さな池の中に半月も映し出されていた。
七月いっぱい続いた長雨と、八月初めのぐずついた天気の中、このまま夏は終わるのだろうか?と思わせた。しかし、夏はその後、長い蛹の期間を過ぎ、盆前頃から醜悪な成虫へと蛹の硬い殻をこじ開けたのである。長雨の中、ずっとその凶悪さを太らせ、頑強に育っていたのだ。
盆明けから破間川の堤体を
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