記憶から/道草次郎
 
自分の歩んできた人生なんてゴミみたいなものの寄せ集めだなんて思っていても、記憶の海の底に懐中電灯をかざしてみればそうとも言い切れない事に気付かされることがある。


近所にTくんという子がいた。ぼくよりも四歳年上で小さい頃からすごく背が高かった。Tくんは幼い時に何かの病気にかかり脳に少しの痛手を負っていた。同学年の他の子供より奇妙に高身長で顔付きもどこか違うところがあった。


小学生の時は登校班が一緒だった事もあり、TくんとTくんの弟と一緒に歩いて学校へ通った。T君は当時のぼくにとっては四歳も年上の大きいお兄さんだったが、一方では大人達からT君の事情は聞いて
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