眉毛惜しい/道草次郎
 
或いは小噺『洗顔異譚』



「顔を洗って出直して来い!」って言われたんで

顔を洗ったら顔がとれちまってね

仕方がないからそのまんま取って返すと

みんなして両手あげて逃げちまった

そんなこんなでしばらくすると腹が減ってきた

顔がなくても人間て腹は減るもんだな

でも口を失くしちまったから食べられない

はて、今ごろ口はどこかな?と思ったら

さっき目や耳と一緒に排水口へ流してしまったではないか

なるほど、ではちょうど今ごろ排水管の中か

しかたないから水道局に電話でもするかと思ったら

あ、でも口がな
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